畳の楽しみ方講習会

こんにちは。海運堂管理人のさーりんです。

台風すごかったですね。
海運堂にはテレビが無いので口コミで噂は聞いていましたが、
やっぱりすごかったです。

さて、今日は先週10月11日に海運堂で開催された、
「ていねいに暮らすをたたみから」 畳の楽しみ方講習会 のレポートです。
今更感は否めませんが、とても興味深い内容だったので、 是非紹介させてください。

今回の企画にご協力いただいたのは、
前田畳製作所 代表取締役 前田敏康さん
一級建築士 みゆう設計室 みゆうさん です。
家づくりのプロ、みゆうさんが、 畳のことを前田さんに教わるといった形式で 進行してくださいました。

 

「たけしくんが、たたみになってしまいました!」
「たけしくんが、たたみになってしまいました!」

そう、前田さん自らお話してくださった、 たたみの紙芝居。
「畳には、いろんなことができる」が分かる、 こどももおとなも楽しめる内容でした。

畳ってすごい!
湿気を吸い取ってくれたり、 汚れを寄せ付けなかったり、
転倒してもクッション性があるのでそこまで痛くなかったり、 お父さんのイライラがおさまったり。

でも、実際に、畳のある家は減少しています。

「では、畳の好きなところと、苦手なところを挙げてみましょう」
と、みなさんの畳に対する意識を、みゆうさんが引き出してくださいます。

好きなところ。
・落ち着く
・いい匂い
・寝ころぶことができる
などと、身体が感じる気持ちよさが次々に上がります。

苦手なところ。
・ささくれていたり、カビが生えたり、虫が出るイメージ
・何かこぼすとどうすればいいか分からない
他にもたくさんありましたが、
みなさん、「お手入れがよくわからない」ということが、
畳と距離を置く一因になっているようです。

そこで、畳のお手入れに関して、 細かいところまでお教えいただきました。

【日常のお手入れはほうきで】
畳の目に沿ってほうきで掃くだけで大丈夫。

【拭き掃除について】
・基本的に乾拭きをする
(畳は吸湿性に富んでいるので、水拭きをするとどんどん水分を吸収し、カビの原因になる)
・拭き掃除は、晒や手ぬぐい、使わなくなったTシャツなどといった、目の細かい布で拭く
(雑巾は繊維が太いので、畳の中に繊維が入り込んでしまい、畳を傷つける)
・水拭きは、必ず固く絞った布で、必要最小限に。
水拭きを行った後はしばらく部屋を換気する。

【畳上げ】
年に一度、乾燥した時期に畳を上げる。
下を掃除し、畳を乾燥させる。
上げる場所が無い場合、畳を少し浮かせて、何かを挟んで通気するだけでも大丈夫。

【畳の上にラグを敷いている】
畳が呼吸できない。湿気を溜め込んでしまうので、週一回はめくって掃除!

【裏返し】
畳は、
1.畳床(畳の芯材。昔は藁。今は発泡スチロールのものも多い)
2.畳表(表面のい草)
3.ヘリ
で出来ている。
3年から5年に一度、 畳表を裏返す。

【表替え】
畳表を裏返してから3年~5年経過したら、 畳表を交換する。
※畳表は消耗品

【畳の新調】
畳床も新しいものに交換すること。
畳床の交換時期は畳床の材質、使用状況にも因る。
畳屋さんと相談して決める。

畳の構造・特徴を理解してきちんとお手入れすれば、 永く付き合えることがよく分かりました。

いやいや。
そんな、「付き合える」畳ではなかったんです。
むしろ、「付き合ってもらっている」畳なんです。

昔の住宅は、壁に漆喰や土壁を用いていました。
つまり、壁にも調湿作用があった。
しかし現在の住宅は、壁紙といえばビニールだし、とても気密性が高い。
部屋が暖まりやすいという点では優れているけれど、
こまめに換気をしないと、カビが発生することも多々あるそうです。

気密性の高い空間で畳を使用するということは、
住宅の調湿機能を全て畳が担うことになるので、 どうしても畳は湿気を多く含んでしまう。
そのため、カビも生えやすい。
そして、カビが生えたら「これだから畳は扱いが難しい」だなんて、
ちょっと畳が気の毒でなりません。

そして、畳床。
昔は藁が使われていましたが、今はコルク・発泡スチロール等、様々な資材が用いられています。

藁の畳床と、発泡スチロールの畳床。柔らかさが全然違います・・・!
藁の畳床と、発泡スチロールの畳床。柔らかさが全然違います・・・!

この畳床の資材にも、事情があるそうで。

今、藁を用いた畳床が少なくなっています。
その一因が、コンバイン。
お米の収穫を手作業で行うと、長い藁が手に入り、
それを乾燥・圧縮して畳床にするのですが、 現在はコンバインで刈ってしまいます。
そのため、長い藁が手に入らなくなっているのだそうです。
畳が農業にまで関係してくるだなんて、考えもしませんでした。

また、い草のことも教わりました。
日本で流通している畳に使われるい草の約90%が中国産だそうです。
国産のい草は、わずか10%。
生産している農家は、現在500軒ほどしか残っていないのだそうです。
理由は、後継者不足と、作業の大変さ。
10月から11月といった水の冷たい時期に植え付けをし、 初夏の早朝に刈り取りをするのだそうですが、重労働だそうです。

うーん。

畳、扱いが大変とか、よくわからないとか、
そんなことで距離を置いてしまってもいいのだろうか、と感じてしまいました。

だって、畳産業がなくなってしまったら、
畳でい草の香りに包まれてお昼寝とか、畳にこたつを置いてみんなでお鍋とか、
畳で赤ちゃんがハイハイとか、全部できなくなるわけでしょう?
それはつらいし、悲しい。
「フローリングの方がお手入れ簡単やから」 という問題やない。
取り返しのつかんことになる。

身体が畳を欲するならば、畳という文化を守りたい。

と、レポート書いてて何だか感情的になりました。

海運堂に畳を敷いてから約2か月。
うちの娘はバタフライのような変わったずりばいで動き回り、
転倒を恐れずどんどんつかまり立ちをするようになりました。
それもこれも、この畳のおかげです。

何とも気持ちよさそうな。
何とも気持ちよさそうな。

畳の恩恵を受けている以上、畳に何か恩返しをせねばばちがあたる!

ここに立派な国産い草でできた畳がある。
この魅力や、お手入れ方法などを、身近なみなさんに伝えることぐらいならできそうです。

という訳で、畳についてもっと勉強して、
みなさんに畳と親しくなっていただけるよう、ささやかながら活動してみます。

さて。その活動の一環としまして。

畳の講習会でも話が出たのですが、「おひるね会」をします。
畳の上で、昼寝する。だけ。
畳の気持ちよさを実感するという大義名分の下、
堂々とお昼寝をしていただきます。

また、海運堂の畳上げも、みなさんと共に行うことにしました。
前田さん曰はく「大掃除はさむーい年末にするもの!」
みんなで寒い寒いと言いながら、畳を上げる体験を共有します。

どちらも詳細が決まりましたら、ご案内させてくださいね。

今日は長くなりました。
でも、こうして書くことで、畳がなくなったら困る!という思いに気づくことができました。
お付き合いいただいた皆様に感謝です。
どうもありがとうございました。